大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和58年(ラ)394号 決定

抗告人 東京海上火災保険株式会社

右代表者代表取締役 石川實

右代理人弁護士 針間禎男

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一、抗告の趣旨及び抗告の理由

別紙記載のとおり

二、当裁判所の判断

本件記録によれば、抗告人主張の経過で本件土地建物について一括して期日入札が実施され、昭和五八年一一月四日原決定がなされたことが認められる。

民事執行法第一八八条に準用される第六三条は、同条所定の剰余を生ずる見込みがないと認められるときは、差押債権者が所定の申出及び保証の提供をしないかぎり、競売の申立を取消すべき旨を定めている。しかしながら、同条違反の瑕疵に気付かず、一たん入札期日が開かれ、最高価買受人が決まった後は、もはや同条違反は入札の許否に影響を及ぼさないものといわなければならない。けだし、無駄な入札期日を開くことを防止しようという同条の趣旨は貫徹しようがないからである。ただ、右売却により不利益を受ける優先債権者には執行抗告が許されると解すべきものとしても、差押債権者は何ら自己の権利が害されていないから、執行抗告は許されない。

従って、抗告人の主張するとおり剰余を生じないとしても(もっとも、本件土地については剰余を生ずるものと認められる。同法第八六条第二項)、差押債権者である抗告人は、原決定により、自己の権利を害されたということはできないから、本件執行抗告は不適法であって、許されないものといわねばならない。

以上の次第であるから、本件抗告を却下し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小林定人 裁判官 坂上弘 山本博文)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例